データが人の行動や組織の成果にどのような影響を与えているのか──。
本書『データの見えざる手』は、私たちが日常で無意識に行っている行動の背後にある「データの力」を解き明かし、行動変容や組織改善にどう活かせるのかを示してくれる一冊です。
本記事では、本書の概要、重要ポイント、読んで感じた気づき、そして日常への応用についてまとめています。
1. 背景
データが人や組織にどのような影響を及ぼすのかを深く理解したいと思い、本書を手に取りました。特に「行動データがどこまで人の幸福や成果に関係するのか」という点に興味がありました。
2. 概要・感想
著者:矢野和男
出版年:2018年
分野:データ・技術
■ 本書の概要
本書は、著者が長年取り組んできたウェアラブルデバイスによる行動データの研究をもとに、「人の行動はどのようにパターン化されているのか」「行動が幸福や成果にどうつながるのか」をわかりやすく解説しています。
データが示す“人間らしさ”や“行動の限界”を浮き彫りにしながら、組織改善や働き方改革にデータをどう活かすべきかを提示する内容です。
■ 本書の重要ポイント
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ウェアラブルデバイスのデータから、人の行動には「U分布」という特徴的なパターンがあることが判明。
一日の中で「激しく動ける時間」は一定であり、行動量には自然な限界が存在する。 -
行動量が幸福度や成果に直結するという知見。
例えばコールセンターでは、休憩時間の活動量が高いほど顧客満足度が高いというデータが得られている。
著者らが開発した AI「H」による行動改善支援は、実際に売上向上にも寄与したという。 - ただし、データから導かれた改善行動と成果の因果関係を説明するのは難しく、施策の納得感を得るには工夫が必要だと感じた。
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当時は名刺型デバイスが成功要因とされていたが、2026年の現在ではそのまま通用するかは不明。
技術の陳腐化スピードが速いことを改めて実感した。
■ 読んで感じたこと・気づき
現在、世界を席巻しているのは ChatGPT、Gemini、Llama といった LLM であり、なぜ H が広がらなかったのかを考えさせられた。
やはり「使いやすさ」と「オープン化戦略」は技術普及において極めて重要であり、一企業内に閉じた技術では社会的な広がりを得にくい。
また、名刺型デバイスが当時は最適解だったとしても、今では必ずしもそうとは言えない。技術の進化が速いからこそ、プロダクトの寿命や価値の変化を常に意識する必要があると感じた。
3. 日常への活かし方
LLM が発展した現在、データと成果の因果関係はますます複雑化している。それでも、行動を素早く変えることで結果を早く得られるという本書の示唆は、今でも十分に通用する。
「納得感」は重要だが、変化を起こすスピードも同じくらい重要。
技術を社会に浸透させるには、機能だけでなく“受ける(バズる)”ことも欠かせない。
そして、データ量の増加に伴い、ストレージ・CPU・GPU・電力といったインフラ需要は今後も高まり続けるだろう。データ活用の未来を考えるうえで、インフラ視点の重要性も改めて感じた。
4. まとめ
- 人の行動にはデータで説明できるパターンが存在する。
- 行動量は幸福度や成果と密接に関係している。
- 技術普及には「使いやすさ」と「オープン性」が不可欠。
- データ活用の未来には、インフラの進化が欠かせない。